食品パッケージの裏側に並ぶ「原材料」の表示。普段からじっくりチェックする方も多いのではないでしょうか。
なかでも気になるのが、後半にズラリと並ぶ「食品添加物」。保存料、着色料、香料など、その種類は多岐にわたります。
しかし、実はすべての添加物が表示義務の対象というわけではありません。
一部の添加物については特定の条件を満たすことで、表示しなくてもよいとされているケースがあるのです。
そして、その代表的な例が「加工助剤」や「キャリーオーバー」といったキーワード。
どちらも対象成分は表示が免除されるルールですが、その役割や使われ方には明確な違いがあります。
本記事では、そんな疑問の多い「食品添加物」について、基本ルールと表示が免除されるケースについて詳しく解説。
加工助剤とキャリーオーバーの違いについても、具体例を交えながら丁寧に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
“見えない添加物”の正体を知ることで、より安心して食品を選ぶヒントが見つかるかもしれません。

食品添加物とは?

食品添加物は食品衛生法 第4条において、“食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によつて使用する物をいう。”と定められています。
具体的には、食品の品質を保つための保存料、見た目を良くする着色料、味を整える甘味料や酸味料などがあり、
現在、日本で使用が認められている食品添加物は約1,500種類以上あります。
また、これらは大きく分けて「指定添加物」「既存添加物」「天然香料」「一般飲食物添加物」の4つに分類されています。
・参考資料:消費者庁>食品添加物>概要
※2024年4月1日に、食品衛生基準行政は、厚生労働省から消費者庁に移管されました。
食品添加物にはあまり良いイメージをお持ちでない方も多いかもしれません。
しかし、麺の弾力を生み出す「かんすい」や、豆腐製造にかかせない「凝固剤(にがり)」など、
古くから使われてきた成分も“食品添加物”として扱われるものがあるため、全てが危険であるとも言い切れません。
一方で、「たんぱく加水分解物」や、「果糖ぶどう糖液糖」などのように、食品とは認識しにく合成成分でも、添加物には分類されないケースもあります。
そのため、「無添加」や「〇〇不使用」といった表示だけを頼りにするのではなく、
必ず原材料を確認し、聞き慣れない成分が多く含まれていないかチェックする習慣を持つことが大切です。
また、添加物の中には表示が省略されたり、複数の成分がまとめて書かれる場合もあるため、
こうしたルールを正しく理解し、食品表示についての知識を深めておくことで、より安心して食品選びができるようになります。


食品添加物の表示ルール

食品添加物は、商品の「添加物欄」又は「原材料名欄」に、使用される割合の高いものから順に記載され、
原材料名欄に書かれている場合は、スラッシュ「/」で区切ったり改行することで、食品と区別して表示されます。
また添加物は、原則として「物質名」が表示されますが、
消費者の関心が高いとされる以下の“8種類”については、その具体的な「用途名」も併記することが義務付けられています。
用途名 | 表示例 |
---|---|
甘味料 | 甘味料(アセスルファムK) 甘味料(カンゾウ) |
着色料 ※添加物の中に「色」の文字を含む場合は、用途名を省略できる。 | 着色料(青1、赤40、黄4) 着色料(コチニール) |
保存料 | 保存料(ソルビン酸K) 保存料(亜硫酸塩) |
増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料 ※添加物の中に「増粘」の文字を含む場合、「増粘剤」又は「糊料」の用途名を省略できる | 増粘剤(キサンタンガム) 安定剤(増粘多糖類) ゲル化剤(ペクチン) |
酸化防止剤 | 酸化防止剤(V.E) 酸化防止剤(ビタミンC) |
発色剤 | 発色剤(亜硝酸Na) |
漂白剤 | 漂白剤(亜硫酸塩) |
防かび剤・防ばい剤 | 防かび剤(イマザリル) |
・参考URL:消費者庁>食品表示法等(法令及び一元化情報)>食品表示基準に係る通知・Q&Aについて>食品表示基準について(別添 添加物関係)
増粘安定剤は使い方によって、少量で高い粘性を示す場合には「増粘剤」、液体のものをゼリー状に固める作用(ゲル化)を目的として使う場合には「ゲル化剤」、粘性を高めて食品成分を均一に安定させる効果を目的として使う場合は「安定剤」と呼んで区別します。
引用:4 増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料
添加物が省略・免除されるケース

食品添加物は、原則として「物質名」の表示が義務付けられていますが、
実は省略されたり表示しなくていいケースもあり、含まれている添加物がすべて記載されているとは限りません。
一括表示

食品添加物のなかで、以下の14種類については「一括名」で表示することが認められています。
これらの表示があった場合、実際には複数の添加物が含まれている可能性があるということです。
一部の食品添加物については使用目的を表す『一括名』で表示できる例外が認められており、物質名が表示されない食品添加物があります。
引用:物質名が表示されない食品添加物がある?

一括表示ができる添加物は以下の通り。
一括表示名 | 主な使用目的 | |
---|---|---|
1 | イーストフード | イースト(酵母菌)の働きを強める |
2 | ガムベース | チューインガムの基材 |
3 | かんすい | 中華麺類の弾力、色、風味 |
4 | 苦味料 | 苦味をつける、強化する |
5 | 酵素 | 食品の製造・加工時に使用 |
6 | 光沢剤 | 食品の保護、表面に光沢を与える |
7 | 香料 | 香りをつける、強化する |
8 | 酸味料 | 酸味をつける、強化する |
9 | チューインガム軟化剤 | チューインガムを柔軟に保つ |
10 | 調味料(アミノ酸)、調味料(アミノ酸等)、 調味料(核酸)、調味料(核酸等)、 調味料(有機酸)、調味料(有機酸等)、 調味料(無機塩)、調味料(無機塩等) | 味の付与、調整、向上 |
11 | 豆腐用凝固剤(凝固剤) | 豆乳を固めて豆腐にする |
12 | 乳化剤 | 乳化、消泡、分散など |
13 | 水素イオン濃度調整剤(pH調整剤 ) | 食品のpHを調整し、変色・腐敗などを抑える |
14 | 膨張剤、膨脹剤、ベーキングパウダー、ふくらし粉 | ガスを発生させ、生地を膨らませる |
例えば、「1:イーストフード」は、酵母の発酵を助けてパン生地などの膨らみを良くするための添加物です。
特に大量生産される市販のパンでは、製造効率や見た目の均一さを保つために広く使用されています。
しかし「イーストフード」という名称は特定の物質を指すわけではなく、
実際には“硫酸カルシウム”、“グルコン酸ナトリウム”、“塩化アンモニウム”など、複数の成分を組み合わせた総称(=一括表示名)です。
この添加物は、認可されている15種類以上の成分の中から、用途に応じて組み合わせて使われますが、
実際の食品表示には「イーストフード」としか書かれず、消費者にはどの成分が何種類使われているのかを知る手立てがありません。
(3)添加物の範囲 以下の添加物をイーストフードの目的で使用する場合
塩化アンモニウム 塩化マグネシウム
グルコン酸カリウム グルコン酸ナトリウム
酸化カルシウム 焼成カルシウム
炭酸アンモニウム 炭酸カリウム(無水)
炭酸カルシウム 硫酸アンモニウム
硫酸カルシウム 硫酸マグネシウムリン酸三カルシウム リン酸水素二アンモニウム
引用:別添 添加物関係(1-4)
リン酸二水素アンモニウム リン酸一水素カルシウム
リン酸一水素マグネシウム リン酸二水素カルシウム
・参考URL:食品衛生の窓>一般用加工食品(添加物) /消費者庁>食品表示法等(法令及び一元化情報)>食品表示基準に係る通知・Q&Aについて>食品表示基準について(別添 添加物関係)




キャリーオーバー


キャリーオーバーとは、原材料から「持ち越された」添加物のことで、残留していても表示されない場合があります。
簡単に言えば、“原材料の原材料”は表示を免除されるケースが多いということです。
次のすべての条件に当てはまる場合は「キャリーオーバー」となり、表示が免除されます。
- 食品の原材料の製造又は加工の過程において使用されるもの
- 当該食品の製造又は加工の過程において使用されないもの
- 当該食品中には、当該添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの
(例)
シュークリームの原料配合中、少量使用されているマーガリンに含まれていた乳化剤
ビール製造の際に使用されるスターチやホップ中の二酸化硫黄
揚げパンやドーナッツの製造に使用する揚げ油に含まれていた消泡剤としてのシリコーン樹脂
引用:一般用加工食品(添加物)
例えば、「菓子パン」の原材料に、“マーガリン”と書かれていた場合、
このマーガリンの中にも、もともと保存料などの添加物が含まれていた可能性がありますが、
最終食品の「菓子パン」に対しては、濃度が薄まって保存料としての効果は発揮しないため、
成分が残っていても原材料に記載されないということです。
つまり、惣菜やレトルト食品など、様々な材料や調味料が混ぜられる加工食品であるほど、
このような“見えない添加物”が含まれている可能性が高くなります。




加工助剤


加工助剤(かこうじょざい)とは、食品の加工時に使用される添加物であり、
完成前に除去されたり中和されたりしてほとんど残らないものを指します。
たとえば、抽出溶媒、精製時のろ過、酵素、洗浄剤などがこれに該当します。
食品の加工の際に添加されるもので、次の3つのいずれかに該当する場合は「加工助剤」となり、表示が免除されます。
引用:一般用加工食品(添加物)
- 当該食品の完成前に除去されるもの
(例)油脂製造時の抽出溶剤であるヘキサン- 当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの
(例)ビールの原料水の水質を調整するための炭酸カルシウム- 当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないもの
(例)豆腐の製造工程中において、大豆汁の消泡の目的で添加するシリコーン樹脂
加工助剤には、「塩酸」や「ヘキサン」、「亜塩素酸ナトリウム」といった化学物質も利用されることが多く、
最終食品には残らないとは言え、安全性はやや気になるところです。
その食品添加物の使用基準で、最終食品の完成前に除去あるいは分解または中和することが定められているもので次のようなものが該当します。
亜塩素酸ナトリウム、アセトン、イオン交換樹脂、塩酸、過酸化水素、次亜塩素酸水、シュウ酸、臭素酸カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、二酸化ケイ素、ヘキサン、ポリビニルポリピロリドン、硫酸
ただし、除去又は中和という使用基準にかかわらず、水酸化カリウムは例外で、物質名で表示されます(食品表示基準について(加工食品)1義務表示事項(4)添加物、③ その他 ケを参照)。
引用:Q5 具体的には、どういうものが、加工助剤になるのですか


・参考URL:日本食品添加物協会>食品添加物の表示
その他:表示面積が小さい、バラ売り等


ここまで一括表示、キャリーオーバー、加工助剤など、表示がされない添加物について紹介しました。
実は、これ以外にも原材料や添加物の表示が省略・免除されるケースがあり、それが以下の通りです。
- 容器の表示面積が小さい…容器の表示面積が30cm²以下の場合
- 容器に入れずに販売される…惣菜、パン屋など「量り売り」や「バラ売り」
- 製造者と販売者が同じ場合…レストラン、ファストフード店、持ち帰り弁当など
3 前二項の規定にかかわらず、次の表の上欄に掲げる表示事項の表示は、同表の下欄に掲げる区分に該当する食品にあってはこれを省略することができる。
〜中略〜
添加物 容器包装の表示可能面積がおおむね三十平方センチメートル以下であるもの(特定保健用食品及び機能性表示食品を除く。)
引用:食品表示基準 第三条
(義務表示の特例)
第五条 前二条の規定にかかわらず、次の表の上欄に掲げる場合にあっては、同表の下欄に掲げる表示事項の表示は要しない。〜中略〜
食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合
引用:食品表示基準>第五条
容器包装に入れず、ばら売りなどで販売される食品については、添加物を含む旨の表示義務はありません。しかし、次の場合は、売り場等に添加物の物質名及び用途名を使用した旨を表示することが望まれます(食品表示基準について(別添 添加物))。
引用:食品衛生の窓>その他の表示事項
- 防かび剤又は防ばい剤として、アゾキシストロビン、イマザリル、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、ジフェニル、ジフェノコナゾール、チアベンダゾール、ピリメタニル、フルジオキソニル又はびプロピコナゾールを使用した食品
- 甘味料のサッカリン、サッカリンカルシウム又はサッカリンナトリウムを使用した食品
まとめ:原材料のシンプルな食品を。


省略又は免除される「食品添加物」について解説しました。
日本では多くの食品添加物が認可されており、なかには同じ用途のものがまとめて表示されたり、表示そのものが免除されているケースもあります。
そのため、いくら気をつけていても、表示義務のない添加物については知る手段が限られており、見落としてしまいがちです。
しかし日頃から「原材料表示」をしっかり確認したり、「加工助剤」「キャリーオーバー」「一括名表示」などの表示ルールを知っておくことで、
どんな食品に注意が必要か、少しずつ感覚が身についてきます。
特に、スーパーの惣菜やレトルト食品などの加工品には、見えない添加物が使われていることが多いため、
できるだけ原材料がシンプルなものを選ぶようにしましょう。



